※MSX Advent Calendar 2015参加記事です。
これまでのあらすじ
MSXのJIS第二水準漢字ROMの存在判定は、龠(83区94点)のグリフの左上8×8ドットのデータのチェックサムを使用して行います。詳細は11-Jun-2015に記していますが、MSX-Write II, FS-A1ST, HBI-J1の三つとも、龠のグリフは同じデータを使っていました。Panasonic系の漢字ROMとSONY系の漢字ROMはフォントデザインが大きく異なっているにも関わらず。
分かっていないこと・知りたいこと
SANYO系MSXの第二水準漢字ROMにおいて、龠のグリフはどのようなデータになっているのか?というのが未だに解決されていない疑問です。SANYO系MSXの実機さえあれば吸い出して調べるだけなのですが、残念ながら実機を持っていないためにどうにもなりません。
類似環境での調査
昔、とある方のblogで、SANYO系MSXはタイプバンクのフォントを使用しているという話を目にしました。DOS/Vが登場する前に、日本語が使用できるPC/AT互換機として存在したAXパソコンのごく一部の機種(SONY Quarter L)でもタイプバンクと思われるフォントを使用していたので、これを使用して龠のグリフがどうなっていたかを調べてみます。
本来であれば、AXパソコンをAXパソコンとして存在させるための要となるJEGAカードから完全なフォントデータを吸い出した上で調べるのが筋ではあります。しかしQuarter Lに搭載されていたJEGAカードは手元に残っているものの、これを動かすためのISAバスを搭載したPC/AT互換機を手放してしまっているため、はるか昔にFONTX2用フォント作成ツール(mkfxntax.exe)で吸い出しておいた結果を使用しています。よって不完全なデータで調査を行っている可能性があります。
龠の左上8×8のチェックサムは0x00 + 0x01 + 0x02 + 0x04 + 0x1b + 0x60 + 0x3d + 0x25 = 0xe4、この結果ではJIS第二水準漢字ROMなしと判断されてしまいます。
推測
実際のところがどうなっているかについては、実機から吸い出したデータを見ない限り何とも言えないので、あくまでもここでは推測を記すことしかできません。
おそらくですが、SANYO系の漢字ROMにおいても、龠のグリフはPanasonic/SONY系の漢字ROMと同じデータになっているのではないでしょうか。逆に言えば、SANYO系の漢字ROMにおいては、このグリフに限りタイプバンクのグリフではない可能性が高そうです。
おわりに
この話を書く前に、以下のような実験を行っています。
- 11-Feb-2015 Panasonic/SONY系の漢字ROMで、同じソフトウェアを実行するとどう雰囲気が変わるか
- 13-Feb-2015 FONTX2形式のデータを使用してMSX用漢字ROMもどきの作成(完全な互換性を有する物を作り出せないため、もどきとしています)
- 21-Aug-2015 PC-8801用漢字ROMボードに入っていたフォントを使用したMSX用漢字ROMもどきの作成
実機ではできなかった漢字ROMのフォントデータの変更も、エミュレータの登場により気軽に試せるようになりました。MSXの漢字ROM(のフォントデザイン)はメーカーによって違うというのはよく知られている事実だと思いますが、この違いがソフトウェアの動作(雰囲気)に大きな影響を及ぼしていたことを指摘する人はあまり多くないように思われます。
フォントは、その機種の「顔」であると自分は考えます。MSXに限らず全てのホビーパソコン(ワープロも含む)において、漢字ROMのデータはきちんと保存され、可能であれば自由に利用できるようにして頂きたいと常日頃考えているのですが、この記事を読んだ皆様はどうお考えでしょうか。60.00kg(00:05)